財政破綻(クラッシュ)は避けられない

前の項目で見たように、団塊の世代が労働の現場から退場すると、労働市場への流入と退出の人数のバランスが崩れて、実質の労働力人口が減少することになります。おおむね70歳まで非正規パートタイムで働き続ける人が多いとすると、これから団塊の世代が働く現場から消えていくことになります。それと同時に、団塊の世代が年齢的に医療費がかさむ時期を迎えることになり、国全体の医療費支出の増加にますます拍車がかかることになります。そのあと、少し遅れて、介護費用の増加が避けられないものとなります。一方で税収については、人口のボリュームゾーンの団塊の世代が働かなくなり、給与所得がなくなるので、所得税の税収は減少してしまいます。支出については一定程度抑えたとしても生活に必要なものは買うでしょうから(団塊世代の多くは年金収入と貯蓄があるので)消費税収の落ち込みは、所得税ほどではないでしょうが、それでも、こちらも落ち込むことに変わりはありません。ところで労働力人口が減れば、その減少率を上回る労働生産性の上昇がないと、経済はプラス成長できません。経済がプラス成長できないと増税なしに税収は増えません。一方で税負担が増えれば、経済成長にブレーキがかかります・・・。というわけで近い将来、国の財政はいまより悪化する可能性が高いです。ところで、いまでも1000兆円を超える借金を背負っている日本という国家が、これから人口が減る、かつ高齢化がさらに進むのが確実で労働力人口の急激な減少は避けられないという中で、いつまで耐えられるものでしょうか。もちろん、いまは、経常収支も黒字だし、国民の貯蓄が国の借金総額を上回っているので、それだけを見ればまだ安泰のようにも見えます。しかし、いつか、それもそれほど遠くない将来には、貿易収支の赤字の恒常化や赤字幅の拡大、資本周囲の黒字の縮小で経常収支の黒字幅は縮小していくでしょうし、高齢者が老後の貯えを徐々に切り崩していくことによる貯蓄の減少と国の借金が増え続けることによって、今までプラスだったものがマイナスに転じる日がやってくるはずです。さらにそんな日がやってきそうだとみんなが思い込めば、その日を待たずに、一気に日本が売り込まれることになりかねません。そこで逆説的ですが、ある意味、経常収支や「貯蓄-国債残高」でプラスを維持しているうちに、小さめのクラッシュを起こしてくれたほうが、回復力もあるだろうし、間に合ううちに対処ができて立ち直るのも速いだろうと思っているのですが、市場はなかなか思いどおりには動きません。

実際にクラッシュが起きれば、先送りにされていた改革が一気に進む可能性があります。

国の官僚の中でもそれなりの人は、クラッシュに備えた自分なりのプランA、プランB・・・を頭の中やパソコンの中に用意しているだろうと思います。ただ問題は、いざそれを実行に移そうとすると、反対する人たちは必ずいるということです。改革で既得権益を脅かされる人たちは、必ず反対します。だからこうした改革はほぼ必ず骨抜きにされます。そういう意味では対処可能な早めのクラッシュは、現状を多少延命させる効果があるだけで、やがて次のクラッシュの脅威にさらされることになるだけということになりそうです。結局、

対処が容易なクラッシュなら、回復も速いので、ドラスティックな改革は進まない公算が大きいです。

明るい展望は持てそうにありません。

加えて、近い将来脅威になりそうなのが、現在非正規労働で働く人たちの老後の問題です。非正規で働く人たちの中には、もちろん配偶者が正規の勤め人でしっかり厚生年金を受け取れる人たちもいるでしょうが、そうでない人たちはその多くが厚生年金の対象外で、労働の現場から退場した場合、たちまち困窮に陥る人たちが多いとみられています。本来なら非正規雇用の枠の拡大を決めた時点で、「非正規」で働く人たちの老後の生活設計をどんな仕組みにするのか、その費用をだれが負担するのかなどを考えて、新しい制度を用意しておくべきでした。こうなることはあらかじめわかっていたはずで、備えを怠ってきたこと自体、まったく理解できないことですが、制度設計を怠ってきたツケはとても大きいものになりそうです。いまの制度では生活保護しかそうした世帯への支援のメニューが見当たりませんが、このまま、その日が来ると、生活保護申請が爆発的に増えるおそれがあります。国の財政はそのとき、どうなっているのでしょうか。

この国の行方

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